バケバケ2
5.本物
5.本物
『シイがいなくなった?』
電話口で灰音が聞き返す。
「うん、ジェットコースター乗ってて…そしたらシイが…」
『わかった。とりあえず今からそっち向かうからそこから動くなよ。』
「わかった。」
電話が切れる。
突然消えてしまったシイ。
私が乗り物に乗りたいなんて言わなければ…でも、そんなことを言っても仕方がない。
ジェットコースターに乗っている状態のシイを攫うなんて、バケバケの仕業としか考えられない。
私は近くにあったベンチに座った。
どうしよう。
ふと顔を上げると見たことのある人がこちらへ向かって歩いて来ていた。
あれは…燕さん?
そういえば、今日千秋のライブがあるんだった。
燕さんはマネージャーでもある。
おそらく付き添いで来たんだろう。
「燕さん!」
私はベンチから立ち上がり、燕さんに駆け寄った。
「…洋子。」
「この間はありがとうございました。怪我はもう大丈夫ですか?」
「…問題ない。洋子はどうしてここに?」
「実は…」
私は燕さんにこれまでの経緯を話した。