バケバケ2
短剣を握るエレジーの腕は震えていた。
「わかった。」
俺の言葉に、エレジーは頷く。
「実はね…一つだけあるの。シイがバケバケの力を取り戻す方法が。ハイネは隠していたんだけど…」
エレジーは語り出した。
俺がバケバケの力を取り戻す方法…洋子を時雨から守る方法を。
それはあまりに残酷で、俺には到底受け入れられる内容ではなかった。
「シイ…私は今から最後の力を使ってこの短剣をあなたに投げる。」
「……エレジー、やっぱり俺は!」
「そしたら、あなたはその短剣で私を殺して。」
エレジーの目は真剣そのものだった。
「いくわよ…」
エレジーの手から短剣が離れ、俺の手に収まった。
俺が…エレジーを…
「シイ、早く!!」
できない、だって…
「シイ!!!早くしないと私はあなたも、ハイネも殺してしまう…あとから来るであろう洋子も殺してしまうかもしれないのよ?そうなったら誰が洋子を守るの?!」
「……。」
「早く私を殺して…!!私が化物になってしまう前に…」
「…俺は」
「あんた洋子を守りたいんでしょ?!」
短剣を握りしめる。
その瞬間、全ての音が無くなった気がした。
エレジーに向き直る。
覚悟は決まった。
エレジーが笑った気がした。
俺は…洋子を守らなきゃ。