バケバケ2
「こちらこそ。楽しかった。」
「坂本さんのこと、下の名前で呼んでもいいかな?」
早月くんは真っ直ぐに私のことを見つめていた。
私はどうしたらいいのか分からなくて、目線を逸らした。
「…いいよ。」
「あのさ、洋子ちゃん。俺…」
「……。」
少しの沈黙の後、早月くんが口を開きかけた時だった。
「僕は強くならなくちゃ。」
私たちの目の前に小さな男の子が立っていた。
今にも泣きそうな顔の男の子…
「お前、どうしてここに…」
早月くんは聞こえないような小さな声で呟いた。
「だれ?早月くんの知り合い?」
そう尋ねると早月くんは驚いたようにこちらを見る。
「洋子ちゃん、見えるの…?」
「へ?見えるって…?この男の子のこと?」