バケバケ2
数日後。
俺と洋子は見舞いのため、早月が入院している病院に来ていた。
「早月くん、もう起き上がって大丈夫なの?」
「うん、ありがとう。2人にはすごく感謝してるよ。」
「そっか、よかった。」
早月の傷は幸い浅く、すぐに退院出来るそうだ。
「私、花瓶に水入れてくるね。」
洋子はそう言って病室から出て行った。
病室には俺と早月だけが残された。
「ありがとう、桜木くん。」
「別に大したことしてねーよ。」
「あの子供…小さい頃の俺なんだ。ずっとずっと、親に生き方を決められる毎日にうんざりしててさ、そしたらある日あの子供が現れたんだ。」
早月は話し始めた。
バケバケが現れたのは最近のことらしい。
「1年のとき、洋子ちゃんを見かけて…一目惚れだったんだ。彼女だけが心の支えだった。3年になったら卒業の前に告白しようと思っていた。でも…桜木くんが現れた。」
あのバケバケが現れたのは俺がちょうど転校してきた当たりらしい。
早月は本当に洋子のことが好きだったんだ。
「正直、俺は桜木くんに勝てる気がしないよ。洋子ちゃんが気を失ったあの時、彼女ずっと君の名前を呟いてたんだ。」
早月は少しさみしそうに笑う。
「でも俺は諦めないよ。本当に洋子ちゃんのことが好きだからね。」