バケバケ2
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まだ、あの音は消えない。
もうこれで最後だと、洋子を抱き締めたあの時、洋子の心臓の音が聞こえた。
正直、洋子のなのか俺のなのかは分からないけど。
もうすぐ約束の10年だ。
洋子はおそらく自宅にいるはず。
俺は洋子の家の前まで来ていた。
まだあいつの姿はない。
自宅には母親もいるし、下手にあいつも洋子に手出しはできないはずだ。
エレジーの命と引き換えに手に入れた力…感情を自分の体を粒子化することで武器として具現化する。
ただしこの力を使う時に全身に激痛が走る。
この痛みはきっと俺への罰だ。
時雨は確実に洋子を殺そうとするだろう。
止めるんだ。
今の俺はあの時の無力な俺とは違う。