バケバケ2
「バケバコは世界を新しく作るだけ。本当の現実の世界に取って代わるなんてできない。でも洋子がいれば…洋子の命を犠牲にすれば、それは可能になる。時雨が洋子をしつこく狙っていたのはそのためよ。」
それじゃあ、あの約束の10年は…バケバコを完成させるための期間だったってことか。
「だけど、そうなると時雨の目的は何なんだ?俺はあいつの目的は洋子を手に入れることだと思っていた。でも、洋子は目的を達成するために必要な鍵でしかなかった。」
「…わからないわ。でも、時雨にも変えたい過去があったんじゃないの。」
あいつの変えたい過去…
「とにかく、こんな世界早く壊しちゃってよ。シイなら出来るんでしょ。」
「……。」
そうだ、こんなの間違ってる。
洋子の命と引き換えに新しい世界なんて、そんなことさせない。
俺が止めるんだ…でも…
この世界を壊したら、今いるギンはどうなるんだ?
「何考え込んでんの?私なら平気だから。」
俺の気持ちを見透かしたようにギンが言う。
「もともとなかった命よ。後悔なんてしてない。私はまた誰かの心から生まれればいいのよ。」
昔からそうだった。
こいつは勘が鋭くて…強くて…
「ありがとう、ギン。」
「そんな顔しないでよ。ほら、行きなよ。ここはシイの居場所じゃない。」