バケバケ2




「バケバコは世界を新しく作るだけ。本当の現実の世界に取って代わるなんてできない。でも洋子がいれば…洋子の命を犠牲にすれば、それは可能になる。時雨が洋子をしつこく狙っていたのはそのためよ。」


それじゃあ、あの約束の10年は…バケバコを完成させるための期間だったってことか。


「だけど、そうなると時雨の目的は何なんだ?俺はあいつの目的は洋子を手に入れることだと思っていた。でも、洋子は目的を達成するために必要な鍵でしかなかった。」


「…わからないわ。でも、時雨にも変えたい過去があったんじゃないの。」


あいつの変えたい過去…


「とにかく、こんな世界早く壊しちゃってよ。シイなら出来るんでしょ。」


「……。」






そうだ、こんなの間違ってる。


洋子の命と引き換えに新しい世界なんて、そんなことさせない。


俺が止めるんだ…でも…









この世界を壊したら、今いるギンはどうなるんだ?









「何考え込んでんの?私なら平気だから。」


俺の気持ちを見透かしたようにギンが言う。


「もともとなかった命よ。後悔なんてしてない。私はまた誰かの心から生まれればいいのよ。」


昔からそうだった。


こいつは勘が鋭くて…強くて…


「ありがとう、ギン。」


「そんな顔しないでよ。ほら、行きなよ。ここはシイの居場所じゃない。」








< 226 / 277 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop