バケバケ2
この世界が本物になれば今の世界は消え、時雨を止めれば今の世界は変わらない。
それはつまりこの世界を取れば洋子が消え、今の世界を取ればエレジーが消えるということ。
灰音が動く。
俺はその攻撃を受けることで精一杯だった。
「なんだよ、早く力使えよ!」
使えるわけない。
エレジーを犠牲に手に入れた力で、灰音を傷付けることなんて。
灰音は俺を睨み付ける。
「エレジー。」
灰音に名前を呼ばれたエレジーは頷くと手で円を描く。
そこに鏡が現れ、鏡の中から短刀が浮かび、床に落ちた。
灰音はエレジーの足元のそれを拾い、俺にその切っ先を向ける。
「エレジーのためだ、悪く思うなよ。」
あの短刀は俺があの時エレジーを刺したものだ。