バケバケ2
「出来ない、そんなこと。」
「殺してくれ。俺はエレジーなしじゃ生きられない。」
あの時、おそらく俺はエレジーの命だけでなく、灰音の命も絶ったのだろう。
灰音にとってエレジーがどれほど特別な存在か、俺は知っていた。
灰音の背後から、エレジーが俺の元に歩み寄った。
「シイ、力を使って。ハイネを斬って。」
「…斬るって」
「殺すわけじゃないわ。肉体じゃないものを今のあなたは切れるはず。ハイネはこの世界に囚われている。その鎖をあなたが斬るの。」
肉体じゃないものを斬る…?
「わたしがあなたに託した力は、洋子を守りたいというあなたの気持ちに応えているはず。だからあなたは目に見えないものが斬れる。」
全然意味がわからない。
どういうことだ、目に見えないものが斬れるって。
それに洋子と何の関係が…
「きっとすぐに意味は分かるはず。シイ、私を信じてハイネを斬って。ハイネを救って。」
エレジーは嘘を言っている訳でも、俺を騙そうとしている訳でもなさそうだった。
俺はエレジーの最後の願いを聞くことにした。
黒い粒子が体から漏れ出て、黒い大鎌を形作る。
再びあの激痛が体に走る。
俺は大鎌を両手で握り、項垂れる灰音を見下ろす。
そして灰音を斬った。