バケバケ2




「出来ない、そんなこと。」


「殺してくれ。俺はエレジーなしじゃ生きられない。」







あの時、おそらく俺はエレジーの命だけでなく、灰音の命も絶ったのだろう。


灰音にとってエレジーがどれほど特別な存在か、俺は知っていた。


灰音の背後から、エレジーが俺の元に歩み寄った。


「シイ、力を使って。ハイネを斬って。」


「…斬るって」


「殺すわけじゃないわ。肉体じゃないものを今のあなたは切れるはず。ハイネはこの世界に囚われている。その鎖をあなたが斬るの。」


肉体じゃないものを斬る…?


「わたしがあなたに託した力は、洋子を守りたいというあなたの気持ちに応えているはず。だからあなたは目に見えないものが斬れる。」


全然意味がわからない。


どういうことだ、目に見えないものが斬れるって。


それに洋子と何の関係が…


「きっとすぐに意味は分かるはず。シイ、私を信じてハイネを斬って。ハイネを救って。」


エレジーは嘘を言っている訳でも、俺を騙そうとしている訳でもなさそうだった。






俺はエレジーの最後の願いを聞くことにした。








黒い粒子が体から漏れ出て、黒い大鎌を形作る。


再びあの激痛が体に走る。


俺は大鎌を両手で握り、項垂れる灰音を見下ろす。







そして灰音を斬った。











< 236 / 277 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop