バケバケ2
3.追憶
3.追憶
自慢の兄だった。
私と兄は同じ中学に通っていた。
年が離れているため、一緒に通うことはなかったが、中学での兄がどんな人物であったかは大体わかる。
兄は有名人だったからだ。
中学ではしょっちゅう兄の話を聞いた。
兄は文武両道、生徒会長も務め、入学式も卒業式も生徒代表として壇上に上がり、当時兄の顔を知らない者は学内に居なかったほどだと聞いている。
そんな兄は学校中の女子の憧れであり、ファンクラブまで出来ていたそうだ。
何人もの女子生徒が兄に告白をしたらしい。
兄はその全てを断ったそうだ。
自分には好きな人がいるから、と。
その話を聞いた当時の私は、そんなの嘘だと思った。
兄が異性に興味を示すなんて、想像がつかなかったからだ。
兄はテレビに出ている綺麗な女優さんも、モデルの女の人も、アイドルにも興味を示さなかった。