バケバケ2
ー10年前ー
夜も更け、布団から出た少年は、眼鏡をかけ時計を確認すると襖を開け、廊下に出た。
少年の心は高鳴っていた。
これから待つ未来のことなんて何も知らずに、その感情のあまりない少年は、生まれて初めての自分の感情に戸惑いながら廊下を歩いた。
少年は中庭を目指した。
少年の寝ていた部屋からはそんなに遠くはないが、その日は中庭までの距離が少年にとっては長く感じられた。
少年は走り出したい気分だったが、その気持ちを抑え、家の住人を起こさないように廊下を歩いた。
少年は中庭に出るガラス張りの引き戸を開けた。
中庭にの真ん中の大木が月明かりに照らされながら少年を迎えた。
「シグ…」
大木の下には少女が立っていた。