バケバケ2
大木の影から出てきた彼女の真っ白な肌に明かりが射す。
少年はこれほど夜と月明かりが似合う少女は他にはいないだろうと、その時思った。
「シグ、こっち。」
少女に手招きされ、少年はサンダルを履き石段を降り、木の下にいる少女の前で止まった。
少女が一歩前へ進むと、2人の顔はすぐ近くになった。
「梅雨、僕は…」
少年の不安げな表情に、少女は少年の両手を握った。
「大丈夫。」
少女はそう言うと、少年の胸に顔を埋めた。
「シグは優しいね。」
「僕は優しくなんか…」
「大丈夫だから。シグはバケバケになりたいんでしょ?」
少年が頷くと、少女は満足そうに微笑み、少年の体から離れた。
そして大木に右手を添わせる。
「昭仁さんから聞いたの。この木は不思議な力が宿っているんだって。だから大丈夫…」
少女の言葉は、彼女自身に向かって発せられているようにも感じられた。
少女は左手を少年の右手と繋ぎ、目を閉じた。
「私の力を全部シグにあげる。」
「…え?」
少女の言葉に少年は驚いて目を見開いた。
「さよなら、シグ。」
そして少女は少年の前から消えた。