バケバケ2
「…どういうことだ?」
俺は目の前に立つ時雨に問い掛けた。
今の話が本当なら、俺が知っている話とかなり異なる。
俺は今まで、時雨がバケバケの力が欲しいがために梅雨さんを騙し、その力を奪った結果、梅雨さんは亡くなったのだと思っていた。
でも、今の話では梅雨さんは自ら望んで死を選んだように聞こえる。
そして、梅雨さんのその決断をあの日の時雨は知らなかった…?
「僕は、バケバケに憧れていました。僕は常にバケバケに狙われる。梅雨は僕を守ってくれる。その構図が嫌でたまらなかったんです。だから僕は梅雨に守られることのないよう、バケバケと戦ってきた。」
梅雨さんはいつも言っていた。
シグは強いから、私が守らなくても大丈夫なんだと。
でも、シグは人間だから、しかも普通の人間ではないから、いつかきっと私が命を張って守らなくてはならない日が来ると。
そして、命を張っても守れなくなる時が来ると。
「僕は、バケバケになりたいと梅雨によく話していました。本当にバケバケになりたかった訳ではありません。」
俺には、次に時雨が何を言おうとしているのか分かってしまった。