バケバケ2




「本当はシグと一緒に生きたかった。でも、今こうしてまたシグに会えて、同じ時を過ごせるの。」


梅雨さんは幸せそうに笑った。


「私はここでシグと生きるわ。」







梅雨さんの目に、迷いはなかった。


「梅雨さん、聞いてください。この世界は偽物なんです。」


「知ってる。でももうすぐ本物になるの。この木の力で。」


よく見ると、木の中心が光っており、中が透けていた。


「…洋子!」


木の中に洋子がいる。


「梅雨さん、この世界が本物になれば洋子が消えてしまうんですよ?」


梅雨さんは木の中の洋子を見つめたまま言う。


「それも知ってる。でもね、何かを得るために犠牲は付き物だから。」


「そんな…」


梅雨さんは本気だ。


時雨と共に、本気でこの世界を現実にするつもりなんだ。





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