バケバケ2




「梅雨さん、お願いします…洋子を」


「じゃあシイは私に死ねというのね。」


「そんなんじゃ…」


「でも、あなたの言ってることってそういうことじゃない?」


梅雨さんのその言葉に、俺は何も言えなかった。


それが本当のことだったからだ。


今、俺が洋子を助け出せば、梅雨さんはこの世界とともに消え、2度目の死を迎えることになる。


「やっと私は、使命なんて関係なしにシグと一緒にいられるの。シイだって私の気持ちわかるでしょう?」


もし俺が梅雨さんの立場ならどうしていただろう。


俺も洋子と一緒にいたいと思った。


俺は洋子を守るために生まれて来たが、そんな使命なんて関係なしに、ただ洋子と一緒にいたいと思うようになった。


きっと梅雨さんも、理想の世界なんてそんなこと考えているんじゃなくて、ただ時雨と一緒にいたいだけなのだ。


俺がもし梅雨さんの立場なら同じことをしていただろう。


それでも…







「俺はこの世界を認める訳にはいかない。」







この世界が消えれば、梅雨さんは2度死に、エレジーやギンにももう会えない。


それでも、俺は洋子を守る。






< 254 / 277 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop