バケバケ2
黒い粒子が俺の体に纏わりつく。
俺の指先は真っ黒に染まっていた。
粒子が鋭い爪を形作り、背からは烏の羽のような真っ黒な羽が、俺の体を突き破った。
「まるで悪魔みたいですね。」
時雨が冷ややかに笑う。
「あらゆるものを自己の満足のために犠牲にする、あなたにぴったりです。」
粒子が身体の傷を埋めて行く。
そうか、俺はもうバケバケですらないのかもしれない。
もう完全な化物なのか。
体から溢れる粒子は止まることなく、俺の体の前で大鎌の形を作り出した。
俺は鎌を握ると、立ち上がり時雨と向き直る。
俺は空高く舞い上がり、鎌を振りかざしながら地上の時雨に向かった。
時雨は俺を見上げ、傘を高く掲げる。
そして、俺の鎌が傘に触れようとした瞬間、傘が開いた。
見えない壁のようなものが鎌ごと俺を弾き飛ばした。
体が強く地面に叩きつけられる。
すぐに俺は起き上がり、時雨の追撃から逃れるため、再び飛んだ。
時雨の追撃は続く。
放たれる水の弾の一つが羽に当たり、羽の一部が粒子に戻ってしまった。
バランスを崩した俺は地面に落下した。
「10年もあったのに、君は何をしていたんですか?」
時雨は倒れている俺の頭の近くまで歩み寄ると、俺の髪を掴んで持ち上げた。
「本当に洋子を守る気があるんですか?」