バケバケ2
1.彼方
1.彼方
「洋子、今度の日曜日空いてる?」
私の向かいの席でコーヒーを飲みながら莉子は私に尋ねる。
「ちょっと待ってね…あ、空いてるよ。」
「よかった。真央と瑞穂も空いてるみたいだし、みんなでどっかご飯でも食べに行かない?」
「行きたい。久し振りだな、2人に会うの。」
「卒業式以来だから半年ぶりくらいかな?」
ここは大学の食堂だ。
1年前、私は兄と共に事故に遭い3日間意識を失っていたらしい。
そのショックでどうやら私は事故の前後の記憶を無くしてしまったようだ。
意識を取り戻した私は、母や友人の助けもあり、無事に高校を卒業し、大学に進学した。
莉子とは同じ大学だが、瑞穂と真央は違う大学に通っている。
「そう言えば、お兄さんの具合はどうなの?」
「だいぶ良くなったよ。怪我はもう治ってこの間退院したけど、精神的ショックが大きかったみたいで、なんだか元気がないの。」
「そうなの、心配だね。」
「でもきっと大丈夫。お兄ちゃん、強いから。すぐに元気になるよ。」
「そっか。」