バケバケ2




何だっけ。


どうして私は思い出せないんだろう。






最寄り駅で降りると、私は家に直行せず、お兄ちゃんの住むアパートへ向かった。


お兄ちゃんは研究室で忙しいって聞いていたけど、今日はたまたま家にいたようで、インターホンを鳴らすと兄が出迎えた。


「どうしたんですか、急に。」


兄は私に紅茶を注ぎながら訊く。


「事故のことで、お兄ちゃんに聞きたいことがあって…」


「1年前のですか?」


「うん。」


「何を聞きたいんですか。」


「お兄ちゃん、黒い箱のことなんか知ってる?」


すると、少しだけ兄の表情が変わった。


しかし、すぐに兄は元の優しい顔に戻る。


「何の話ですか?」


やっぱり、お兄ちゃんは何か隠してる。


「知らないならいいの。あとね、その事故の時私を助けてくれた人がいたでしょ?」


「いましたか、そんな人?」


あの事故で、兄は通り魔に刺されてすぐに警察に電話をしたと言っていた。


でも私は知っている。


私はあの時どこかに閉じ込められた。


そして、そこから救ってくれた人がいたのだ。







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