バケバケ2
「お兄ちゃん、私たちは通り魔になんてあっていない。そうだよね。」
「……。」
兄は黙っていた。
これは肯定なのだろうか。
「私を助けてくれた人があの時いたはずなの。」
その人はたぶん、私にとって大切な人だったはずだ。
でも、私は思い出せない。
大切な人なはずなのに。
兄は何も話してはくれない。
でも必ず何かを知っている顔だった。
でも、私は知らない。
兄の家から自分の家に帰る途中、赤みがかかった茶髪のボサボサの頭の男の人の後ろ姿を見つけた。
「灰音…」
男の人が振り返る。
「あぁ、なんだ洋子か。」
「こんな所でどうしたの?」