バケバケ2




「いや、ちょっとな。」


灰音はアンティークショップを1人で経営しており、たまたま私はその店に客として入り知り合った。


「灰音ってさ、ずっと1人であの店やってきたの?」


私の唐突の質問に、灰音は訝しげな顔をする。


「なんでそんなこと聞くんだよ。」


「バイトとか雇ってなかったっけ…?あの店、なんだかもう1人誰かいた気がして。」


「もう1人…?いないはずだけど。でも不思議だよな、俺もそう思うんだ。」






近くの公園に移動し、灰音とベンチに座った。


「そういえば、通り魔の事件のとき灰音も近くにいたんだよね。」


あの時、救急車を呼んだのは灰音だと聞いている。


偶然灰音はあの日近くにいて、私たちが襲われる所に遭遇したと。


でも、兄と私が出掛けていなかったことは確かなのだ。


そうなると灰音も何か嘘をついているということになる。


「あの時、灰音の他にも誰かいたよね。」


「俺の他に?お前の兄貴だろ?」


「ううん、違う人。たぶん、男の人…」



私がそう言うと、灰音は黙って俯いた。


やっぱり、灰音も何か知ってるんだ。


「悪い、洋子。俺そろそろ行かないと!」


灰音はベンチから立ち上がる。


「あ、待ってよ!」


灰音は用事があるからと、手を振りながら公園を去って行った。


逃げられた。






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