バケバケ2
「大丈夫。この近くに僕のアパートがあります。そこに彼を連れて行きましょう。」
兄は自分より長身の燕さんを軽々と担ぎ、公園の出入口に向かった。
私もそのあとに続く。
よかった。
お兄ちゃんが来て…
兄のアパートは本当にすぐ近くにあった。
ちょうど私の家と、公園の間くらいの位置だ。
兄はアパートの2階にある、自分の部屋の鍵を開け、燕さんを担いだまま中に入った。
「洋子はもう家に帰りなさい。」
兄は優しく微笑みながら言った。
「え?……でも…」
「今日はたしか始業式でしたね。午前で学校が終わるし、母さんが昼食用意して待ってるんじゃないですか?」
「……」
「母さんに心配かけてはいけません。洋子は家に帰りなさい。」
「でも、燕さんが…」
「僕の言うことが聞けないんですか?」
笑顔のまま私に尋ねる兄。
だが、その目は笑ってはいなかった。