バケバケ2
家の外では敷島が待っていた。
「洋子さん、いました?」
「いや、俺のアパートに向かったそうだ。」
俺はアパートの方向へ走り出そうとした。
「行くぞ、敷島。」
「……。」
「敷島?」
敷島はその死んだ魚のような目を俺に向けていた。
「何のために洋子さんのところへ行くんスか?」
「何のためって…洋子に危険が迫ってる。俺守らなきゃ。」
「そうっスか。」
「わかったら行くぞ。こうしている間にも洋子が…」
「洋子さんを守るために…」
敷島の目はまっすぐに俺を捉えている。
敷島の顔はさっきとは別人のようだった。
その鋭い刃のような視線に、俺は寒気を感じた。
敷島の口が微かに動く。
「守る力なんかないくせに。」