バケバケ2




家の外では敷島が待っていた。


「洋子さん、いました?」


「いや、俺のアパートに向かったそうだ。」


俺はアパートの方向へ走り出そうとした。


「行くぞ、敷島。」


「……。」


「敷島?」


敷島はその死んだ魚のような目を俺に向けていた。


「何のために洋子さんのところへ行くんスか?」


「何のためって…洋子に危険が迫ってる。俺守らなきゃ。」


「そうっスか。」


「わかったら行くぞ。こうしている間にも洋子が…」


「洋子さんを守るために…」


敷島の目はまっすぐに俺を捉えている。


敷島の顔はさっきとは別人のようだった。


その鋭い刃のような視線に、俺は寒気を感じた。


敷島の口が微かに動く。






「守る力なんかないくせに。」














< 49 / 277 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop