バケバケ2
「お兄ちゃんがどうかしたの…?」
私は恐る恐る訊いてみた。
なんとなくは感じていた。
自分の兄が普通ではないことに。
「いや、洋子のお兄さんに任せておけば安心だなと思って。」
そう言ってシイは普段通りの表情を見せたが、さっき一瞬だけ見せた重い雰囲気は私の心に蟠りを作った。
「そう…そうだよね。」
私もなんでもないような顔をした。
小さいころから、兄は私に優しかった。
私が泣いているときはすぐにそばに来てくれて、いつも一緒に遊んでくれた。
優しすぎる兄。
私は兄が好きだ。
それと同時に、兄が時々恐ろしく感じる。
わかっていた、本能的に。
兄が普通とはかけ離れた存在であることに。
わかっていたはずなのに、知りたくないから逃げていた。
今も、私は逃げようとしてる。
気がつくと私の家の前まで来ていた。
「じゃ。」
シイは背を向けた。
「え、寄っていかないの?」
「いいよ、今から行くとこあるからさ。」
「そう…。」