バケバケ2
「時雨…」
「嫌ですね、お義兄さんって呼んでください。」
時雨はゆっくりと俺に近づいてきた。
「お義兄さんというのは可笑しいですかね、祖父から生まれた君は僕と兄弟のようなものですから。」
「……。」
「10年前は僕が人間で、君はバケバケだったのに、10年たった今は僕がバケバケで君はただの人間。おかしなものですね。」
時雨はまた一歩近づいた。
「シイ君、君はここに何しに来たんですか?」
何も言葉が出なかった。
「燕君を助けに来たんですか?」
「……。」
「じゃあ中に入ったらいいじゃないですか、こんなところで立ち止まってなにをしてるんですか。」
時雨は俺の心を全て見透かしているかのように笑った。
「無理ですよね、君は何の力もないし、自信もないのだから。」