バケバケ2
何も言い返せない。
時雨の言うことは正しかった。
「安心してください。燕くんは応急処置が済んだらちゃんと返しますよ。」
時雨は俺の横を通りすぎる。
「僕が興味があるのは洋子だけ。10年も待ったんです、そろそろ僕は限界が来ています。」
時雨は俺の耳元で続けた。
「もうすぐ…僕は洋子を殺すでしょう。シイくん、君はそんな状態で大丈夫なんですか。」
そう言い残し、時雨は自分のアパートの中に入っていった。
俺は振り向くこともせず、しばらくアパートの前に立ち尽くしていた。
10年前の記憶が、また静かに、鮮明に蘇る。