バケバケ2
その時、俺は時雨がどんなやつかも知らなかった。
だからギンに何も言ってやることができなかった。
ギンと別れ、自室に戻った。
ここではそれぞれのバケバケに三人に一室部屋が与えられている。
部屋のふすまを開けると、すでに同室の二人が部屋に戻ってきていた。
「よぉ、シイ。」
「あぁ、どうも。」
「ホントお前愛想ないよなぁ、そんなんじゃモテないぞ?」
「大きなお世話です。」
この陽気な青年はキリ。
昭仁さんの護衛を仕事としている俺の先輩だ。
「この生意気メガネ。」
キリさんが俺の頭に軽くチョップを入れる。
「いてっ…」
「こーら、キリ止めないか。」
もう一人のルームメートがキリの手首を掴んだ。
「仲良くしろ、二人とも。」
すらりと背の高い茶髪で猫目の青年をキリさんが睨み付ける。
「兄貴はすぐシイの肩を持つ!」
「今のはキリが悪い。」
この人はコテツ。
みんなからは兄貴と呼ばれており、キリさんとともに昭仁さんの護衛をしている金槌のバケバケだ。