バケバケ2
「今から話すことは誰にも言わないでほしい。」
兄貴は真剣な表情で顔をあげた。
そして話し始めた。
「これは梅雨から聞いた話だ。」
兄貴の話はこうだった。
梅雨さんは時雨の護衛として今まで仕事をしてきた。
そして回りもきがついている通り、梅雨さんは時雨に好意を抱くようになっていた。
恋心とほぼ同じくらいの。
ここまでは俺も気がついていた。
問題はここからだった。
昨日の夜、梅雨さんは時雨からある提案を持ち出されたらしい。
それは梅雨さんと昭仁さんの契約を切り、時雨と契約をするというものだった。
「それって…昭仁さんが持ち主じゃなくなるってことですか?」
「そうなるな。」
「そんなことできるんですか?」
「いちおうできる。バケバケってのは持ち主である人間の感情を原動力にしている。お前は昭仁さんの洋子ちゃんを守りたいっていう感情から生まれただろ。」
「はい。」
「その原動力となる感情の供給源が変われば持ち主を変えることができる。」
「そうなんですか。」
「ただ、持ち主が変わるのはすごく感情のエネルギーが必要なんだ。失敗すれば梅雨は死んでしまう。」
「そんな…」
「時雨が梅雨に最低限のエネルギーを与えられれば大丈夫なんだが…」
兄貴は目を伏せた。
「あいつ、梅雨にこの話を持ちかける際、梅雨になんの感情を原動力として与えるって言ったと思う?」
「なんですか?」