バケバケ2




灰音はいつものようにソファーにだらしなくもたれ、シイは灰音の向かいに座り深刻そうな顔で俯いていた。


「何かあったのかしら。」


わたしが聞くと、シイは顔をあげた。


「俺、バケバケの力を取り戻したいんだ。」


「バケバケの力を…?」


別に驚きはしなかった。


シイがそう思う気持ちはわたしには痛いほどわかるのだ。


矛盾している。


わたしは人間になりたくて、だけど人間にはなりたくない。


シイはトキとの戦いで、完全に力を使い果たしただの人間になっていた。


正直羨ましかった。


同時に、可哀想だと思ったのだ。


なんの力もなくなってしまったシイを、同じバケバケとして。




< 97 / 277 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop