バケバケ2
灰音はいつものようにソファーにだらしなくもたれ、シイは灰音の向かいに座り深刻そうな顔で俯いていた。
「何かあったのかしら。」
わたしが聞くと、シイは顔をあげた。
「俺、バケバケの力を取り戻したいんだ。」
「バケバケの力を…?」
別に驚きはしなかった。
シイがそう思う気持ちはわたしには痛いほどわかるのだ。
矛盾している。
わたしは人間になりたくて、だけど人間にはなりたくない。
シイはトキとの戦いで、完全に力を使い果たしただの人間になっていた。
正直羨ましかった。
同時に、可哀想だと思ったのだ。
なんの力もなくなってしまったシイを、同じバケバケとして。