バケバケ2
なんの力も持てないということは、大事な人を守ることもできないのだから。
そしてシイは語り始める。
シグとの、10年前の約束を。
「俺は、洋子を守るために生まれてきたんだ。洋子と学校に通うために生まれたんじゃない。」
「そうだな。」
「灰音なら何か知ってると思って来たんだ。」
「さっきも言ったが…俺だってなんでも知ってるわけじゃない。」
灰音は深くため息をつき、続ける。
「でもそうだな、燕の件は心配だな。燕はまだシグのところにいるんだろ。」
「たぶん…あれから千秋に連絡したけど燕は帰って来てないみたいだし。」
「千秋はなんて?」
「洋子のお兄さんから電話があって、燕がけがをして意識が戻るまで預かっているって言われたらしい。けがも大したことないし、すぐに戻るだろうって言われたって。」
「千秋はシグのこと知らないからな。洋子のお兄さんってこともあるし心配してないんだろう。」
「そうだな。」
私は二人の会話を黙って聞いていた。
シグ…
嫌な名前だった。
2度と聞きたくない。
思い出したくもない。