君を愛す ただ君を……Ⅱ
「ちょ、ちょ……ちょっと、聞いた?」

 朝礼前に、クラスメートの瑞希ちゃんが単語帳を捲っている私に駆け寄ってきた。

「どうしたの? 慌てて」

「三年の綾瀬美雪が、コクッたらしいよ! 軽部先輩にっ。コクッたんだって」

 息を切らして、瑞希ちゃんが机をバシっと叩いた。

「綾瀬先輩は陸上の美人マネと言われてる人だからね。そりゃあ、イケメン陸上部員である軽部先輩なら、コクッても別に違和感はないんじゃない?」

 冷静に単語帳を捲りながら、返事をする私。

 でも内心は穏やかじゃない。

 美人マネとして数々の噂を聞く綾瀬先輩が、彩樹に告白したなんて。

 彩樹はなんて答えたのだろう。

「もう、どうしてそんなに冷静でいられるのよぉ。我らのヒーロー軽部先輩が他人のモノになるんて……考えられないわぁ」

 瑞希ちゃんが、頭を抱えてベシベシと机を叩く。

「もとから、軽部先輩は誰のものでもないけどね」

「愛菜は興味ないかもしれないけど、あの人は凄い人なんだってば。それが一人の女のモノになるなんて……嫌ぁぁ」

 私だって嫌だよ。

 彩樹が、他の女性と付き合うなんて……考えたくない。

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