君を愛す ただ君を……Ⅱ
『もう一度、詳しい検査を……』

 私は屋上のフェンスに寄りかかりながら、昨日の言葉を思い出した。

 そっと心臓の上に手を置く。

 トク、トクと鼓動が聞こえてくる。

 私の心臓の音だ。パパはいつも、私の胸に耳をつけて、心臓の音を聞いていた。

 パパは家族みんなの心臓を音を聞きたがる。

 とくにママも心臓はよく耳にあてて聞いてた。それで言うの。『生きてるっていいね』って。

 ママはその言葉を聞いて、にこっと微笑んで「そうだね」って答える。

 ママがずっと心臓病を患ってて辛い想いをしたから、パパはいつも心配してた。

 そんな二人を見ていて、羨ましいなあって思ってた。

 お互いを思い会える夫婦に憧れた。私もいつかは……って。

「詳しい検査なんかして、重い結果がでたらどうするのよ」

 私は青空に向かってぼそっと呟いた。

 私は未来を失いたくない。検査をしたら、きっと未来を失ってしまう気がする。

 だから知りたくない。未来を知りたくないの。
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