君を愛す ただ君を……Ⅱ
 屋上を出て、階段を下りたところで足を止めて、振り返った。

『その子、勘違いしちゃうじゃない』

 勘違い……か。

 まるで付き合ってるみたいな言い方。ううん、付き合ってるのかも。

 だって……そうだよね。

 瑞希ちゃんが騒いでたから。

 綾瀬先輩が、彩樹に告白したって。だから、彩樹と付き合ってるのかもしれない。

 勘違い、しちゃうよ。

 だって、勘違いしたいもの。綾樹に愛されてるって勘違いしたいよ。

 もっと言うなら、勘違いじゃない愛が欲しい。

「これで良かったのかも」

 私はぼそっと呟いた。

 だって綾瀬先輩が来なかったら、私、きっと正直に言っちゃってた。

 心臓に疾患があるかもしれないって医師から言われたって。

 綾瀬先輩が来て良かったんだよ。

 来なかったら、彩樹を困らせてた。

< 18 / 56 >

この作品をシェア

pagetop