君を愛す ただ君を……Ⅱ
 私は、深呼吸をするとゆっくりと歩き出した。

 これで良かったんだ、と心に言い聞かせながら。






「ちょっと待って」

 放課後、私はジャージ姿の綾瀬先輩に呼び止められた。

「何でしょうか?」

 私は足を止めると、綾瀬先輩のほうへと身体を向けた。

「あなたって二年生の越智 愛菜さんって言うのよね?」

「はい、そうですけど」

「学年で1位になるくらい頭が良いのよね?」

「それほどでも」

「謙遜しなくていいのよ。頭がいいなら、わかると思うけど」

「大丈夫です。屋上でのことですよね。勘違いなんてしませんから。軽部先輩とは釣り合わないってわかってますから」

 私は軽く頭をさげると、歩き出した。

 綾瀬先輩に念を押されなくったってわかってるのに。

 
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