君を愛す ただ君を……Ⅱ
 私は教室に戻ると、瑞希ちゃんがキラキラした目で私に抱きついてきた。

「ちょっとぉ、どういうこと? 我らのヒーローがどうして愛菜のところに来たの?」

「あ、えっと……実は」

 私は瑞希ちゃんから離れると、苦笑した。

 クラス中が、聞き耳をたてているのがわかる。

『なんで?』『どうして』と、大して仲も良くない女子たちもこちらに視線を向けていた。

「幼馴染なんだ」

「え? 我らのヒーローと?」

「あ、ああ、うん。でも、でもね。仲が良いのは弟のほうなの。弟も陸上をしてて、毎日一緒に練習しているから。私はその付属品って感じで」

 私は乾いた笑いを浮かべて、席についた。

 フゾクヒン……自分で言っておきながら、ちょっと傷ついた。

 確かに、付属品なんだけどね。

 弟を送ってきてくれるのを良いことに、夜食を無理やり押し付けてるようなもんだし。

 一度も、彩樹から『作って欲しい』なんて言われてないのに、図々しく作ってるわけだから。

 
< 31 / 56 >

この作品をシェア

pagetop