君を愛す ただ君を……Ⅱ
「愁斗の夜食ならわかるが、何で彩樹の分まで作る必要があるんだ?」

 パパがカウンターから顔を出してくる。

「おばさん、ずっと夜勤なんでしょ? パパが夜勤を外れた分、おばさんが夜勤ばかりの仕事なっちゃって。おばさんが家に居ないのに、誰が食事の面倒を見てあげるのよ!」

「彩樹だって子どもじゃないんだから、一人で準備くらいできるだろ。何も愛菜が作る必要など……」

「準備ができないから、私が作ってるの。彼は陸上の選手を目指しているのよ? 何でも好きなものばかり食べられてたら、身体がガタガタになっちゃう。ちゃんとメニューを考えて食べるべきなの」

「愛菜だって、暇じゃないだろ。医学部に行くために、もっと勉強しないといけないって話してたじゃないか」

「医学部にも進学したいけど、彩樹の食事の面倒も見たいの。私は、今できることを、しっかりとやりたい。パパもそうだったでしょ? 中途半端は嫌よ」

 私がジッとパパを見ると、「あ、うん…まあ」とごにょごにょと言葉を濁しながら、キッチンから離れて行った。

 父親として、他の男と恋愛されるのは嫌なのはわかるけど……。

 私、パパと結婚するわけじゃないんだから、いつまでも縛られたくない。

 それに、もしかしたら……そんなに寿命が長いわけじゃないかもれしれないんだから。

 想い残すようなことはしたくないの。

 
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