君を愛す ただ君を……Ⅱ
 検査結果を鞄の中に入れて、私は放課後の校内を歩く。

 陸上部の練習風景を横目で見ながら、私は校庭沿いのコンクリを進んだ。

 放課後の校庭を見るのは好きだ。そこに彩樹がいるからという理由が多いにあるが、それだけじゃない。

 部活を頑張っている人たちの声や音を聞いているだけで、自分自身にも活気が溢れてくる気がするからだ。

 私も、「まだ頑張れる」って気持ちにしてくれるのが、放課後の校庭だと思う。

「愛」とフェンス越しに、彩樹に呼び止められた。

 陸上部のユニフォームを着ている彩樹が、心配そうな眼差しをこっちに向けていた。

「彩樹? どうしたの?」

「『どうしたの?』じゃないだろ。検査結果、今日だろ」

「あ…うん。まあ」

 私はちらっと、校庭の隅にいる綾瀬先輩に目を向ける。

 すごい形相で、綾瀬先輩をは私を見ていた。

 やっぱり……。怒ってるよね。

「結果は……今夜にでも」

「どうして今じゃ駄目なんだ?」

「それは。ここは学校だから」

「なんで学校はいけない?」

「説明は、あとでするから」

 私はスタスタと早歩きで、その場を離れようとする。
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