君を愛す ただ君を……Ⅱ
私は、パパが居間で新聞を読み始めるのを見てから、夜食の準備に取り掛かった。




「いつも悪いな」

 ジョギング兼トレーニングを終えて帰ってきた愁斗をいつも律義に送ってきてくれる彩樹に、お礼として私は夜食を手渡した。

 こめかみから流れ落ちる汗を、タオルでぬぐった彩樹が私の作った夜食が入った弁当箱を受け取ってくれる。

「空箱はいつものように、メールボックスに入れて置いて」

「ああ。わかった」

『じゃあね』と私は手をあげた。

 彩樹が「ああ」と短い返事をして、私に背を向ける。

 そっけない態度だけど、それでもいいの。

 彩樹は陸上とおばさん以外には、無頓着なのを知っているから。

 それでもいいの。私がしたいことをして、彩樹を支えられるなら、それだけでいいの。

 それ以上のことを望んだりはしないから。

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