君を愛す ただ君を……Ⅱ
 いつもように彩樹が背中を向けて、走り去る背中を眺める。

『もう一度詳しい検査を……』

 日中に言われた言葉を思い出して、思わずじわっと目頭が熱くなった。

 私はあと何回、彩樹の後ろ姿を眺められるだろうか……そんなことをふと思ったら、涙が込み上げてきた。

 ダメ、こんなところで泣いちゃ駄目よ。

 私はぐっと喉を奥に力を入れた。

「愛」と彩樹が振り返る。

 数メートル先で足を止めて、私を見てくる彩樹に私は急いで笑顔を作った。

「な、なに? どうしたの?」

「何かあった?」

「何かって?」

「わからないから聞いたんだけど」

「何もないけど」

「そう。ならいい」

 彩樹が府に落ちない表情のまま、私に背を向けて走り出した。
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