君を愛す ただ君を……Ⅱ
 彩樹の姿が見えなくなると、「ふう」と長い息を吐き出した。

 何か、あったよ。

 私、心臓に疾患があるかもしれないって言われたの。

 詳しい検査をパパの病院でするべきだって、病院の医師に言われたんだ。

 でも言えないよ、彩樹にもパパにも。そんなこと言ったら、みんなに心配をかけるだけだもの。

 だから黙ってる。

 私は、私の命のギリギリまで、彩樹の支えになりたいから。彩樹の足枷になんてならない。

 絶対に、迷惑なんてかけないからね。



「彩樹兄ちゃんはすげーよなあ。もう実業団の2つからオファーが来てるらしいぜ。どこからか、大学受験はしないっていう情報が漏れてるみたいだってさ」

 弟の愁斗が、素っ裸になって着替えながらニコニコと自慢げに話していた。

「邪魔しちゃ駄目よ、彩樹は大事な時期なんだから」

「わかってるよ。邪魔なんてするかよ。あんなすげー人と一緒にトレーニングができるだけで幸せだっつうの」

 愁斗がきらきらした目で、ダイニングテーブルにつくと、私の用意した夜食にかぶりついた。

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