作品集・LOVE MELODY
私はどんな人にもいい顔してしまう。
友達は世渡り上手だと言って羨ましがるけど、本当はそうじゃない。
唯のお人よしで、はっきりと嫌と言えないだけ。



酒の勢いがあったとは言え、私の本当の姿を見た課長は貴重な存在。


私は必死に、沢田君の頼まれた仕事をこなした。


キーを叩く音が止まると昼間のフロアでは全く訊こえない空調の音が訊こえる。

それくらい夜のフロアは静かだった。


沢田君から企画書を奪い返そうとデスクに行ったけど彼は定時で帰宅していた。


人にこんな膨大な仕事を押し付けて自分は定時に帰るなんて、彼の無神経さには程々、呆れた。


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