月下の幻 太陽の偽り (仮)
「天使の亡骸?」

私はその子を見ました。

小さい体が小さな寝息をたてて眠っていたのを見て亡骸だなんて思うはずが無かった。

-その子は天使の烙印を無理矢理押された可哀想な子供でした。神に刃向かったただ一人の天使、その子の魂が宿った赤ちゃんです。きっと人間の希望になるに違いありません。-

「人間の希望ですって!?」

-今は、信じなくても構いません。ですがいつかこの地を飲み込もうとする神族が現れる時、この子は人間と悪魔の最後の希望になるでしょう。-

「…」

私は何も言わずにそのまま立ち尽くしていました。

彼の話はまだ続きます。

-悪魔は人間に対して何も干渉しません。それが我々の世界の理であり、習わしです。しかし神はいつしかこの世界を飲み込む事になる。我々悪魔はそれを阻止している所です。そして私はこの世界に現れた。この体中の傷も神族につけられた物、私の戦いはまだ終わってはいませんが、その子にはもう戦わせたくありません。その子を出来うる限り私の身から遠ざける為に私はここに来ました。この子を普通の人間として育てて欲しいのです。お願いします。-

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