月下の幻 太陽の偽り (仮)
-もしこの子が成長し、まだここに住んでいたり、何らかの理由でここを訪れる事があれば、渡してあげてください。今は渡してはなりません。知恵も力もないこの子には衝撃が強すぎると思いますので…-

「あげると、どうなるんですか?」

-天使の記憶を呼び覚まします…物心つかない今の状態で渡してしまうと、その子は人間として駄目になりかねません。本当ならその子の為に使って欲しくは無いのですが…-

「解りました。解りましたが…私は今も怖いのです。悪魔は人間を駄目にする教えを学び続けた私には、貴方達悪魔はやはり悪の存在です。この了承も、この子の為にした事、決して貴方の為ではありません。それだけは忘れないで下さい。」

-解りました。それだけで十分です。-

男性は私に背中を見せて道を歩いて行きました。

-その子の名前はアリン。これからそう呼んであげて下さい。-

男性は振り向きざまに優しい笑顔をし、そして…闇夜に消えるように、その場から去りました。

< 109 / 127 >

この作品をシェア

pagetop