月下の幻 太陽の偽り (仮)
「当然です。神に刃向かうなど天使ではあり得ない事なんです。天使は神に対して非常に従順で、そして愛される存在なのです。神に刃向かうなんて…でも。」

そこまで話して、シスターは言葉を止めた。

「どうしたんですか?」

私はシスターに声をかけると、シスターは一瞬の間をあけて話し始めた。

「実際に会った事もない神に対して私の知識は聖書のみなのだとその時知りました。悪魔だと語るあの男性も、私に危害を加える事はなくただ優しい笑みを浮かべる男性で、私の知るような悪魔が果たしてあのような笑顔をするのかと考えると、私の知る事実なんてほんの一部分、下手すると全てが偽りなのかも知れないとそう感じるようになりました。聖職者失格ですね。」

シスターはそう言って自嘲気に小さく笑うと、その場から立ち上がり、近くのタンスの引き出しをあけた。白色の布に包まれた物を取り出し、テーブルに広げて置いた。

そこにあったのは細工もされていない不格好な形の青いクリスタルが飾られたペンダントだった。

「これは、もしかしてさっきの…」

「えぇ、例の男性が私に託したペンダントです。」

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