月下の幻 太陽の偽り (仮)
「君は、何者なんだい? 起きていられるだなんて…」

男性の意外にも爽やかな声は私に質問をしていた。

「…」

私は質問に答えなかった。

答えられなかった。

あんな大きな音をたてていれば誰だって起きられるってものだ。

瑞穂は例外かもしれないけど…

「って…まぁそうだよな、あんな所見たら誰だって怖がるか。」

そう言って男はコツコツと足音をたてて移動していた。

近づいている感じはしなかった。

足音が止むと木で出来た椅子が軋む音がした。

どこかに座ったようだ。

そしてしばらくの沈黙が続いた。

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