月下の幻 太陽の偽り (仮)
私は思わずゆっくりと立ち上がった。

「なんで…」

「えっ?」

「なんで、その名前を…知ってるの?」

少し離れた場所にいたその男は部屋に入る寸前で足を止めた。

返事は返ってこないだろうと思っていたのだろう。

私が顔を出さなければ間違いなくその顔を見ることは無かった。

その男は想像していたよりも若い。
まだ20歳前半を思わせる青年だった。
と言っても、私より少し上ではありそうだ。

髪は落ち着いた栗色の派手過ぎないウルフカット、身長はやや高めでがたいも武器を振るうだけありデカい。

しかし一番に目についたのは、神父の礼服の上にネイビーのロングコートを羽織っているその独特の服装だった。

決してアンバランスな色合いではなく暗色の整った出で立ちだが、まるで戦う者の服装とは言えない。

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