月下の幻 太陽の偽り (仮)
神父の亡霊
「アリン」その男は私の顔を見るなりそう言ってきた。

勿論私の名前は歩美、それ以外の何者でも無い。

名前が体を表すように日本語の名前の日本人。

瞳の色は薄いブラウン、髪も軽く染めてはいるけど脱色すれば日本人特有の黒髪。

日本人離れした容姿は持ち合わせていないつもりだ。

なのに、彼は私を「アリン」と呼んだ。

「何故だ、アリンはあの時、あの時…」

男は混乱しているようだ。

でも私はその場を動けずにいた。

動けるはずが無かった。

恐ろしさに足が震えているのもあるが、何よりも殺人現場を私はハッキリと見てしまったのだから。

「アリン、何故ここにいるんだ?」

不意に男は私に近づいてきた。

それに気づき私も後退る。

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