月下の幻 太陽の偽り (仮)
「こ、こ、来ないでっ!」

大声を張り上げ私が制すると、男もまた足を止めた。

「…」

私はそれ以上何も言えなかった。

男は未だ私の顔を見ていた。

よく見れば美形な優男風の容姿で、その顔だけ見れば武器を持って人殺しするようには到底思えないほどだった。

「アリン、俺が解らないのか?」

男は必死になって私に訴えてきた。

私をアリンと思い込んでいるようだ。

このままじゃ危ない。

私はまた大声をあげた。

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