月下の幻 太陽の偽り (仮)
「来ないでって言ってるでしょ!わ…私はアリンなんて名前じゃなくて粉踏歩美(こなふみあゆみ)って名前があるんだから!」

震える声を隠すかの様に出来うる限りの凄みを持って声を叫んだ。

すると、男はまた少し驚きの表情を見せた。

「あゆみ?」

「そう、だからこないで!」

私は言葉の限りを張り上げた。

男も私の名前を聞いて、私に向けられていた手を下ろした。

「…すまなかった。俺はどうかしていた。」

「…」

男は視線を背け、悲しそうな表情でそう言った。

その表情に、私は少しだけ心が痛んだ。

(人殺しなのに…)

亡霊らしさは愚か、何故だろうか…人殺しらしさも微塵も感じない事に、今になって気がつく。

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