月下の幻 太陽の偽り (仮)
遠くから見た感じは辞書や聖書のようだが、近づいて見ると辞書や聖書とはちょっと違う雰囲気があった。

その原因は表紙だ。

私は教壇前まで立ち、その本をよく見た。

「ダイアリー…」

私はそれをダイアリーと読んだ。ほぼ無意識に…

「えっ!?」

私は私自身に驚いた。

目の前にあるのは、訳もわからない文字で書かれた表紙の本なのに…私がそれをダイアリーと読んだからだ。

「な、なに言ってんのかな私。」

そう言って自嘲気味に笑ったが、そんな自分が怖くて長続きしなかった。

「気のせい…」

だと思いたかった。

しかし…私がその本に触れた時、それは起こった。

触れたとたん、信じられない程の勢いで心臓が高鳴った。

視界がボヤけ、耳が遠くなった。

-未来を予言出来たお前なら、後世の世でも読めたりするかもな。-

遠くなった耳にエコーのような声がはっきりと聞こえる。

重くなった体にムチをいれ、教会内を見回した。

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