月下の幻 太陽の偽り (仮)
すると、教壇からまっすぐに見た位置にある教会の門の前にボヤけた視界の中にはっきりした人影が見てとれた。

神父服の上にロングコートのその姿は忘れたくても忘れられない。

「ガ、ラフ…」

-…今の君じゃ、自我を保つのも大変そうだな。-

「な、何を、言って…」

私は絞り出すような声で目の前のガラフに問いかけた。

-その本は程度は低いが神具だからな。普通の人間には姿形すら見えない物なんだ。-

「何よ、それ…」

呟くような声で反論するも、体の重さに耐えられず、膝をついた。

-…無理はしない方がいい、その本を離せば楽になる。-

そう言ってガラフは本を私の手から取り上げた。

-俺に会いたいなら、真夜中に来るといい。真夜中じゃないと俺が実態を持てないからな-

その瞬間、ガラフの姿が消え、力尽きた私の前にその本が落ちた。

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