月下の幻 太陽の偽り (仮)
あの日から、料理は私の役目になった。

私がまだ小学生の頃に父さんが亡くなってからずっと…

元々看護師だった母さんは結婚を機に退職し、私を育てながら家事に追われていた。

そんな中で暇を見つけては料理を教えてくれたものだ。

だから私の料理の殆どは母さん直伝。

肉じゃがはその中でも一番よく教わった料理だ。

歩美は料理が苦手なのかもねと、子供だった私相手に笑いながらよくそんな事言えたなと今思うが、言われる通り確かに私には調理の才能はあまりない様に思う。

その証拠に十年近く調理しているが未だレシピ通りにしか作れないし、レパートリーもあまり多くない。

煮込み具合を見計らって肉じゃがに砂糖を少し多めに入れるのも世間からは珍しいけども母さん直伝だからレシピ通り。

ご飯が作れるんだから、問題無いでしょ。

そんな事言ったのも母さんか。

まったくもってその通りだなって、今こうして料理を作るとよく分かる。

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